【スプリンターズS】優勝:ローレルゲレイロ
2009(平成21)年10月4日中山、G1・芝1200m、フルゲート16頭、晴・良
順位 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | 着差 | 上り | 馬体重 |
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1着 | (13) | ローレルゲレイロ | 牡5 | 57.0 | 藤 田 | 1.07.5 | 34.6 | 460( -4) |
2着 | (9) | ビービーガルダン | 牡5 | 57.0 | 安藤勝 | ハ ナ | 34.3 | 496( -6) |
3着 | (12) | カノヤザクラ | 牝5 | 55.0 | 小牧太 | 1 1/4 | 33.8 | 508( -2) |
4着 | (8) | アイルラヴァゲイン | 牡7 | 57.0 | 津 村 | ク ビ | 34.7 | 520( +2) |
5着 | (2) | アルティマトゥーレ | 牝5 | 55.0 | 松 岡 | アタマ | 34.7 | 488( +2) |
- 高速決着が続いていた中山の芝。1分7秒台の決着は確実と思われたが予想された範囲の時計で、極端には速くならなかった。前半が32秒9で後半が34秒6。時計を見ると前半はやや速めで、後半が緩くなったとも思われる。だが、決してそうではない。実は、これはちょうど2005年のサイレントウィットネスが勝ったレースとそっくりのラップ構成なのだが、これを逃げ切ったことは高く評価すべきだろう。
- ここ数年で逃げ切りといえば、カルストンライトオ、アストンマーチャン、テイクオーバーターゲットの3頭。前二者は、荒れ馬場を生かした逃げだったが、テイクは良馬場での押し切り。ただ、この時の時計は前後半が、32秒8‐35秒3。前半は今回より速いがほぼ同タイム。そして何より、後半では今回の方が0秒7も速い。つまり、逃げて押し切るには決して易しくない、逆に厳しいラップだった。
- 終わってみれば、スリープレスナイトを完封した高松宮記念の再現。ローレルゲレイロの状態は、明らかにまだ万全ではなかった。その上、体重を4キロ減らして、果たしてこれでベストパフォーマンスが出来るのか、ファンどころか藤田騎手さえ「疑っていた」状態。しかし、ビービーガルダンに迫られてもしぶとく粘って勝ちきった。
- さて、このレースはスリープレスナイトが不在の中、新しい短距離王決定戦の意味合いもあった。レース全体としては、最下位に終わった外国馬シーニックブラストを除いた15頭が僅か0秒6の中にひしめく大激戦だった。タイムだけでは、力が拮抗していると感じるが、あくまで「内容」、逃げ切ったという内容に着目すれば、勝ち馬の力が抜けていることを認めざるを得ないだろう。一瞬にして決まってしまう短距離戦、そして作戦の何もない馬の力を信じるだけの「逃げ」という脚質であり、解説をするために勝因を考える時、結局は単純に「馬の力」としか言いようがない…。だが、やはり展開や状態を克服した「勝ち馬が強かった」の一言だろう。恐れ入った。
- 2着のビービーガルダンは、昨年同様に先団から追いかける形。4角で先頭を射程に捉えにかかるが、決して1番人気のアルティマトゥーレを意識した仕掛けのタイミングではなく、ローレルゲレイロを自分のタイミングで捕まえに行くあたり安藤騎手の考え方は正しい。自分の馬の力を信じるだけ。ただ、その4角で外に若干膨らんでしまったのは結果的には痛い。さらに、昨年も同じだったが坂上でのもうひと踏ん張りが足りなかった。ただ、洋芝向きと評される馬だが、この高速馬場で何の苦も無く追走して抜け出すレースが出来たのは収穫。アテにしづらいところもあるが、やはり力は上位。
- 3着カノヤザクラはやはり、こういう馬場が合う。高速決着で速い流れの中で差し脚を生かすタイプ。ただ、平坦がベストなのは確か。今回は最後の坂を上りきったところでエンジンが掛かってラスト50mほどでごぼう抜きしたが、平坦ならもっとスムーズに加速できていただろう。いつも馬群でごちゃついてしまうため、多頭数では今回のように外に出して追い込んだほうがいいのではないか。
- 5着アルティマトゥーレは、松岡騎手が返し馬で微笑むほどの抜群の出来。しかし、1番人気に応えられなかった。敗因として、まずはキャリア不足という説明がつきそうだが、それはある意味では精神論であり、あまり説明として妥当ではない。直線で一旦インを塞がれる場面もあったが、そのロスは大したものではない。基本的には阪神で1つメドをつけていたとはいえ、中山の急坂はこの馬には合わないということだろう。松岡騎手は「逃げても良かった」と悔いたが、今後のことを考えても先団のインで抜け出す競馬は間違いではない。まして、調子落ちの感があり、それほど警戒する必要もないと思われた、ちょうどいいペースメーカー、つまりローレルゲレイロの後ろで控えられることが見込めたのだから。まだ良化の余地があるだけに、評価は極端に下げる必要はないだろう。
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- 研究員アサノ プロフィール
- レース回顧やコラムが中心の競馬メルマガ「2回中山3日目やや重−中央地方競馬マガジン」主筆。早稲田大学にて助手を務めた後、現在は某研究機関にて地域政策研究に従事。趣味は全国の競馬場巡りで、これまでに中央地方合わせて20以上の競馬場を踏破している。
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