【ジャパンCダート】優勝:エスポワールシチー

2009(平成21)年12月6日阪神、G1・ダート1800m、フルゲート16頭、晴・良

順位 馬番 馬名 性齢 斤量 騎手 着差 上り 馬体重
1着 (1) エスポワールシチー 牡4 57.0 佐藤哲 1.49.9 37.1 502( +2)
2着 (12) シルクメビウス 牡3 56.0 田中博 3 1/2 36.9 484( +2)
3着 (9) ゴールデンチケット 牡3 56.0 ルメール 1 1/4 36.9 478( +2)
4着 (2) サクセスブロッケン 牡4 57.0 内田博 ク ビ 37.6 526( 0)
5着 (3) アドマイヤスバル 牡6 57.0 勝 浦 ハ ナ 37.3 518( +1)
  • スタート後は予想通りごった返す先行争い。エスポワールシチー、既にここまでの道程の中で逃げにこだわらずとも、正攻法でレースができることは鞍上も把握済み。特に主張するわけでもなく、インの進路をキープ。しかし、行くと思われた外国馬ティズウェイが行かず、結局はコーナリングで押し出されるように先頭に立つ形。ただ、これはこれで佐藤哲騎手にとって、わかりやすい競馬をするだけとなり、決して悪い形ではなかった。むしろ、包まれる心配がなくなったとさえ言えるだろう。
  • そのエスポワールシチー佐藤哲騎手の刻んだペースだが、1000m通過が60秒7と昨年よりも遅く、G1のペースとしては遅くも速くもない流れ。だが、数字を見てみるときちんと教科書的にペースの緩急をつけている。前半先行争いが決着しペースが落ち着くと12秒台で推移。さらに向こう正面で一旦ペースを上げて、3角から4角までまたペースを落として脚を温存。ティズウェイも来ず、800mあたりで急上昇したマコトスパルビエロも2番手で収まり、さすがに玉砕覚悟で絡む馬も不在。おかげ平穏に自分のペースを作ることができた。もちろん、馬の能力も高いがここまでスムーズにレースをさせてもらえるとは…。結果、最後まで影をも踏ませない快勝。
  • エスポワールシチーという馬のいい所は、かしわ記念のように中団からのレースができる自在性。ただ、脚質自体が自在というだけではなく「逃げ」という脚質に限った場合でも色々な「逃げ」が自在に打てる、あるいは対応できるというところが大きな長所だ。ワンペースの逃げ(トパーズS)、前半ハイペースでの逃げ(錦秋S)、前半スローでタメを作っての逃げ(西脇特別)と様々なパターンで逃げ切ってきた。往々にしてダート、芝に限らずスピード優位で、結果として「逃げ」または「先行」の脚質となってしまう馬は、ダイワスカーレット、少し遡ってサイレンススズカのようにワンペースで後続を消耗させるタイプが多い。だが、エスポワールシチーはきちんとメンバー、展開に応じて勝率の高い逃げを選択できる、いわば「七色の逃げ」が打てる馬。
  • 今回は、極めて「常識的」な逃げで勝つべくして勝ったレース。佐藤哲騎手もスピードをアピールし過ぎず、冷静に教科書通りに乗った騎乗は目立たないが、ファインプレイだと思う。スピードとスタミナのバランスを高いレベルで併せ持つ。さらに「自在性」もあり、大きく崩れる姿が逆に思い浮かべられない。ここまで様々なレースを意図的に経験させ成長を促し、状態面でもJBCクラシックをパスしてここに照準を合わせた陣営も素晴らしい。2010年代のダート界を未来に振り返るとき、間違いなくこの時代を思い出すためのキーホースとなるだろう。
  • さて、この「常識的」な逃げ。先団の馬がもう少し上位に食い込んでも良かったはずだが、結果上位に名を連ねたのは4着のサクセスブロッケンぐらい。ただ、今回は極度の瞬発力勝負となってしまったことも注意しておきたい。ラスト3Fと2ハロンの時計は実に0秒6も上がっている。いかにラスト3Fまで勝ち馬がタメをうまく作ったかを示す数字でもあるが、同時にこの時点でのスタミナがどれだけ残っているか云々は関係なく、純粋に一瞬の脚が使えなければ最後の叩き合いに加われないレースとなってしまった。この点、まだ長所が分かりにくいサクセスブロッケンだが、勝ち馬には離されたとはいえ、フェブラリーSで示していた瞬発力が生きる形。今回は勝ち馬が強すぎたが、伸びが一瞬だけで最後は止まってしまったあたりからも、距離は現状もっと短い方が、瞬発力が生きるはずだ。
  • 2着シルクメビウスは、現状後方待機が最善との判断から後方一気。必ずしも後方勢に利する流れではなかったが鋭い追い込み。最後の2ハロンはかなり速い脚を使っていたはず。この馬は、脚さえためれば短い区間でも長い区間でも切れる脚が使える馬。中央の競馬場であれば安定した差しを決められそうだ。3着は人気薄のゴールデンチケット。前日の鳴尾記念では後方待機が定石のイコピコを先団から競馬させたルメール騎手。ここは逆に先団からと思われたゴールデンチケットを後方に待機させる作戦。これはハッキリ言えば、着狙いという側面も感じられるが結果は大正解。最後の直線で大外を急襲し際どい3着争いを制した。新しい一面を見せた。3歳ダート勢では軽視されてきたが、意外に奥が深い馬。
  • 研究員アサノ プロフィール
    レース回顧やコラムが中心の競馬メルマガ「2回中山3日目やや重−中央地方競馬マガジン」主筆。早稲田大学にて助手を務めた後、現在は某研究機関にて地域政策研究に従事。趣味は全国の競馬場巡りで、これまでに中央地方合わせて20以上の競馬場を踏破している。
  • 2回中山3日目やや重−中央地方競馬マガジン
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